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〜エッチングについて〜
| ■エッチングとは | ■エッチング前の仕上げ |
| ■エッチングの目的とその作用 | ■エッチング前の準備 |
| ■なぜエッチングで模様が出てくるのか | ■エッチング作業と、その前に |
| ■エッチングに使う薬品 | ■エッチング完了後の仕上げ |
| ■薬品の調合 | ■最後に |
| エッチングとは |
一般的に金属を腐食させその所定の目的を得るための薬品処理をエッチングと広義で言いますが、ここではナイフにおけるブレード面やヒルト・ボルスター等の金属素材で作られた個所の薬品処理について説明します。
| エッチングの目的とその作用 |
ダマスカス鋼や炭素鋼の鍛造したものや炭素鋼の部分焼き入れをしたブレード等の金属部材を薬品処理することによって模様や焼入れの境界線をはっきりとあらわすために行います。
エッチングの作用は金属を化学薬品で腐食させその腐食の程度差により模様を浮き出させる作用です。つまり、金属面を薬品で強制的に腐食(ある種の錆び)させることで模様を浮き出させるのです。
| なぜエッチングで模様が出てくるのか |
金属もその組成により錆びに強い弱い、耐薬品性の優劣等の特性があります。エッチングはその金属素材の特性を利用して模様を浮き出させる作用です。炭素鋼を例に取りますと炭素鋼と呼ばれる素材は多数ありますがその特性により用途がわかれており、それぞれに錆び等に対する特性も異なります。この特性差のある鋼材を組み合わせて鍛接したものが一般的にダマスカス鋼と呼ばれています。つまり腐食特性差を利用して模様を出すのがエッチング処理なのです。
| エッチングに使う薬品 |
一般的に酸系の薬品を用います。代表的な薬品として塩酸・硫酸・塩化第二鉄があります。ここでは入手し易さと安全性を考えて塩化第二鉄での処理を説明いたします。
| 薬品の調合 |
塩化第二鉄500グラムを水(出来れば蒸留水)1750〜2000ccに溶解させ使用します。塩化第二鉄は薬局で届け出不要で購入できます。
| エッチング前の仕上げ |
ブレードの仕上げを例にとって説明します。エッチング前の仕上げはエッチングする素材の種類と最終の仕上げをどのようにするかによって異なります。
エッチングとは金属を腐食させることですのでブレードも当然「痩せます」。つまりエッジ部分をあまり薄くしてしまうとエッチングにより「ペラペラ」になってしまいますので通常の仕上げよりも「若干厚め」に仕上げることが肝要となります。これを忘れると使い物にならないナイフが出来あがります。
また、エッチングさせたくない部分があればそこを透明な塗料でマスキングすることによりエッチングされません。透明なものを使う理由は作業中に塗膜がはがれたり、隙間からエッチング液の浸入があったときにわかるようにするためです。
炭素鋼鍛造品の準ミラー仕上げ
エッチング前にブレード面を2000番まで仕上げ青棒でのバフ仕上げまで行います。
炭素鋼鍛造品のサテン仕上げ
エッチング前にブレード面を800番まで仕上げます。
ダマスカス鋼の準ミラー仕上げ
エッチング前にブレード面を2000番まで仕上げ青棒でのバフ仕上げまで行います。通常のミラー面まで仕上げてもかまいませんがきれいなミラー仕上げにはなりません。
ダマスカス鋼のサテン仕上げ
エッチング前にブレード面を600番まで仕上げます。
| エッチング前の準備 |
所定の状態まで仕上げたブレードを完全に脱脂させます。脱脂はエッチングの作用を均一に行うためであり重要なポイントの一つです。脱脂には台所洗剤できれいに洗った後に消毒用のアルコールで行います。脱脂後は清浄を保ち指紋にも要注意です。
マスキングした場合は塗膜がはがれていないか状態の確認を必ずしておきます。これを怠ると・・・・・結果はわかりますよね。
そう、まだら模様の汚いものが出来てしまいます。
| エッチング作業と、その前に |
やっとエッチング作業の説明です。でも、もう少しだけ能書きにお付き合い。エッチング液を保存するためのボトルなどは準備できていますよね?実際に作業するための容器は?作業場所は?
エッチング液は使っているうちに劣化します。この劣化した部分は結晶化し液の下部に沈殿します。この沈殿部分を除去して使えば比較的長い間使うことが出来ます。このためエッチング液を入れるボトルは下のほうに排出口やコックがついた試薬ビンが東急ハンズなどに売っていますのでそれを使うと便利です。もし無い場合は写真用品で同様のものがありますのでヨドバシカメラなどでさがしてみてください。劣化した部分は明らかに色が異なりますので捨てる際に迷うことは無いと思います。捨てる際には大量の水を流しながら捨てれば大きな問題は無いと思います。また、実際に作業に使う容器ですが樹脂(プラスチック)製のメスシリンダーが便利です。透明で中の様子が見えますし、容量も計れます。ブレードが容器に接する事の無いように液の中に吊るします。
作業場所は出来ればステンレス製の流しがベスト!つまり、一般家庭では台所です。風呂場や陶器の流しでは間違い無く汚損してしまいます。また、換気も充分に行いマスク・手術用のゴム手袋・保護メガネも用意しましょう。
さて、準備は整いましたね。では、実際のエッチング作業を行いましょう。エッチング液をメスシリンダーなどに必要量入れ湯煎し温度を35℃〜40℃程度に保つようにします。その中にブレードを入れ全体に気泡などがついていないことを確認します。もしついていれば軟らかな歯ブラシなどで取り除きましょう。
エッチング液に浸かったブレードはすぐに黒く変色します。大丈夫これで正常。
エッチングする時間は最終形の好みで変わりますがだいたい15分から20分程度です。エッチングしたブレードを取り出し速やかに水で洗い流し中和させる薬品の中に入れます。この薬品には「第三燐酸ナトリウム」を用います。第三燐酸ナトリウムは使わなくても大丈夫ですがあると大変便利なものです。主な用途は園芸用で蘭の栽培を趣味とする方には一般的なものです。つまり、誰でも自由に買える薬品で園芸器具の消毒に使うものです。第三燐酸ナトリウムを使う場合はこの薬品の中に数分間入れその後1200番程度の紙やすりで仕上げ、最終的な仕上げ形態に合わせて仕上げていきます。また、第三燐酸ナトリウムを使わない場合はとにかく水でよく流す!その後は車のクーラント(不凍液)などに浸しその中で作業をするとさびの発生もある程度防げます。
水で流しながら紙やすりを掛けて行き黒い酸化液が出なくなるまで仕上げます。紙やすりが一番身近で使い易い仕上げ材ですがホームセンターなどで売っているスポンジ状か消しゴム状の研磨素材も大変便利です。商品名を挙げますと住友3Mの超超細目という「マイクロファイン」と言う名前のスポンジ状の研磨剤がお奨めです。この研磨作業も非常に重要で磨き残しがあると必ずその場所から錆びが発生し後々大変なことになりますので要注意です。
エッチング程度が浅いと思われる場合は再度エッチング液に浸します。浸す時間を長くすればエッチングが深くなると思われますが実際にはある程度エッチングが進むと「不導体」と言う反応しない膜のようなものが出来てエッチングが進まなくなるため数回に分けて行い希望の状態に仕上げます。このときにも前述しましたようにブレードが「痩せる」のでエッジの厚さには最新の注意を払いながら作業を進めてください。
使った薬品は保管用のボトルに入れ冷暗所で保管しましょう。
おおまかにはここまででエッチングは完了です。しかしながら鋼材の種類によってエッチングの注意点が有りますのでそれも簡単に説明しましょう。
ニッケルダマスカス鋼
ニッケルはほとんど腐食されません。このためニッケル部分も腐食した直後は黒く見えていますが実際にはきれいなニッケル面が出ています。必要以上にエッチングすると本当に「痩せる」ので注意が必要です。ニッケルダマスカス鋼のエッチングは短時間で様子を見るようにするのが安全です。また、必要以上に深いエッチングをすると非常に切れ味の悪い刃物となります。これはブレード面の平滑度が悪くなるためです。
炭素鋼同士のダマスカス鋼
構成する鋼材によって差が出ますが比較的安心して作業が進められます。しかし、コントラストが出にくく深いエッチングをすることが多くなります。また、この鋼材は準ミラー仕上げは無理(ミラーにしたらエッチングがわからなくなる)なため必然的にサテン仕上げとなります。黒染めすると映えるのもこの鋼材です。
ニッケル合金鋼と炭素鋼のダマスカス鋼
標準的なエッチング作業です。もし可能ならばこの鋼材からエッチングを試すのが良いでしょう。とてもエッチングに寛容な素材で15分から20分程度のエッチング1回で仕上がることが多い鋼材です。
ワイヤーケーブルダマスカス鋼及びチェーンダマスカス鋼
もともとワイヤーケーブルはその素材の時点で熱処理された細い鋼線を組み合わせて出来ている素材です。このため鋼材に鍛造された時点で非常に不均質な金属となっています。が、この不均質さがきれいなウロコ状の模様を見せてくれます。チェーンダマスカス鋼も同様の素材です。この鋼材のエッチングは腐食の進み方が均一ではなく部分的に進行することが多く見られますので低温で短時間のエッチングを複数回繰り返すのが安全でしょう。また「痩せ」も比較的多く出ますので注意が必要です。焼入れの際のオーバーヒートによる鋼材内部の沸きがエッチングにより「ス」となって現れることの多い素材です。きれいなエッチングを行うためには信頼できる焼き入れが重要な鋼材でもあります。
炭素鋼の鍛造品
ゆっくりとエッチングを楽しんでください。鍛造によって思わぬ模様が現れます。長時間のエッチングを複数回繰り返すのが良いでしょう。でも・・・模様が出るまでの鍛造は本当に大変です。
炭素鋼の部分焼き入れ品
この場合のエッチングは「タンパーライン」を出すことが目的です。つまり焼き入れ線が出れば良いので比較的浅めのエッチングで充分です。が、鋼材の種類により差が一番あるものですので鋼材毎の特性を試行錯誤で理解する必要があります。鋼材によってはきれいに出たタンパーラインが一磨きで消えることもあります。また、ダマスカス鋼の部分焼き入れの場合は極めて浅めのエッチングを本当に数多く繰り返すことで行います。
ステンレスダマスカス鋼
長時間のエッチングを複数回繰り返します。また、出来るだけ新しいエッチング液を使用する必要があります。塩酸・硫酸などを使う場合も多いのですが「ダマスチール社」製の鋼材を使っている海外の有名メーカーはやはり塩化第二鉄の溶液を使い捨てで使用しているそうです。新鮮なエッチング液が必要と言うことです。エッチング液の温度を50℃程度に保つと結果は良好です。
| エッチング完了後の仕上げ |
エッチングはブレード単体の状態で行い、その後組み立てるのが普通です。このため組立作業中に傷がつくとそこだけエッチング面が削れるため養生は通常のナイフの仕上げと同じように重要です。エッチング面は意外に弱い!希望する最終仕上げに合わせて仕上げますが準ミラー仕上げの場合は単純に青棒を使ってダレに気をつけながらバフ仕上げを行います。サテン仕上げの場合は表面が多少黒く残ったままになりますので防錆油を毎日二回程度塗り、すぐに軽く拭き取り錆びが出なくなるまで、つまり「鉄が落ち着く」まで繰り返します。これは早くて数日、長いと2週間くらいかかります。
| 最後に |
ながながと書いてありますがポイントは簡単です。
| 1.安全第一。 |
| 2.事前準備を完全に行う。 |
| 3.ブレードの痩せに注意する。 |
| 4.薬品で出来た皮膜は完全に除去する。エッチングは錆びである! |
これだけです。最終的には思考錯誤を繰り返し自分の物にしていくのが大切です。